「ヨガ」という言葉は、サンスクリット語の「ユジュ」から派生したものです。「ユジュ」とは、手に入れ、統合し、調和する、という意味です。つまり、私たちの生活を手に入れ、人生におけるすべての側面を統合し、体を、魂、霊、社会と調和させるということです。笑いヨガの概念が進化していくなか、カタリア博士はヨガの基本と、笑いヨガクラブで行っていることとの間には、深い関係があることに気づきました。そこで、ヨガに由来する深い呼吸のエクササイズを、笑いのエクササイズの間に盛り込んだのです。それは、体と脳への酸素供給量を増やすのに役立っています。

呼吸は命:呼吸は生命の基本です。人間は食べ物と水がなくても数日間は生きられますが、呼吸が数分でも止まってしまえば生きることはできません。ヨガの哲学によれば、私たちが生きているのは、宇宙のエネルギーが呼吸を通して体の中に流れ込んでいるからです。それは命のエネルギーの力、つまり、ヨガでは「プラーナ」と呼ばれるものです。

医学的な観点からみると、呼吸の最も重要な要素は酸素です。ストレスやネガティブな精神状態では、呼吸が浅く、不規則になります。私たちは、心が動揺したり、荒れていたりするときには呼吸を抑えがちですが、そうなると、酸素が不足して、血液中に二酸化炭素がたまり、そのことがさらに不安、ストレス、感情的な反応を引き起こします。

より多くの酸素は息を吐くことから:ヨガの呼吸が証明しているように、体内に残っている空気を肺から出して新鮮な空気を取り入れるためには、当然ながら、息を吸い込むよりも長く息を吐き出します。そうすると次の呼吸循環のために、より多くの酸素を取り入れることになります。人が笑っている間、何をしているのか、認識したことがありますか? 実際、私たちは息を吐いているのです。笑っている間は通常の呼吸よりも、はるかに長く息を吐き続けています。通常の呼吸において、私たちは息を吸い、吐きますが、このときに出入りする空気はわずか500ミリリットルです。その一方で、体内のよどんだ空気は1,500ミリリットルあり、より多くの二酸化炭素を含んでいます。笑いのエクササイズをすることで、強制的に息を吐くことができ、体と脳により多くの酸素を供給できます。

肺活量と笑い:呼吸の主な器官は肺です。長時間座って過ごすライフスタイルによって、私たちは肺活量を十分に利用していません。その結果、私たちの肺細胞の一部は、酸素と二酸化炭素の交換に関わっていないのです。笑いと深い呼吸のエクササイズは肺の全細胞を活発にし、呼吸器官を開きます。それは肺活量の増加につながります。

横隔膜が副交感神経系を活発にする:胸郭と腹腔を隔てている横隔膜が呼吸の主要な筋肉である、というのを知っておくことが大事です。呼吸の3分の2は横隔膜の動きによって行われており、肋骨の骨組みが拡大することによる呼吸は、呼吸全体のわずか3分の1にしかすぎません。ストレスのある状況下では、ほとんどの人が胸で呼吸しており、横隔膜を使っていません。

笑いのエクササイズもヨガのエクササイズも、どちらも横隔膜と腹筋の動きを刺激するよう意図して構成されています。横隔膜は自律神経系から特別に分岐したもの(副交感神経系=リラクゼーションを担う穏やかな部門)とつながっています。これと対極にあるのが交感神経系で、これは、ストレスを誘発するシステムとして知られています。人間は、横隔膜を動かせるようになるだけで、このストレス誘因システムのスイッチを切ることができます。ラフタークラブで行われる最も重要なエクササイズは、「ホホ、ハハハ」と唱えることですが、これが腹筋に意識を集中する助けになります。それは、横隔膜を鍛え、おなかの底から笑えるようになるためです。

呼吸を変える、心を変える:呼吸のパターンと心の状態は、直接関係しています。ストレスを抱えての呼吸は速くて不規則、さらに浅くなります。心の平静を乱し、かつネガティブな思いが心の中に横行すると、息止め発作が起こります。反対に、心が平穏なときは、呼吸も速度が落ち、定期的で深くなります。

呼吸は一つのプロセスですが、二つの性質をもっています。ひとりでに続いていき、無意識にコントロールされている一方で、意識して調節したり変えたりすることもできます。おなかの底から笑い、深い呼吸を練習すると、呼吸のパターンを浅いものから深いものへ変えられるようになり、また簡単に心の中の思いも変えられるようになります。ネガティブな考えを持ったとしても、深い呼吸をすれば、体はストレス反応を感じません。

笑いヨガは人と人をつなぐ:無条件の笑いは、異なる文化や国の人々をつなぎます。話す言語やどのように生活しているかは問いません。笑いヨガは、ともに笑う人々同士を強く結びつけようとするのです。結果、家族のような絆が生まれ、社会的相互作用(主に言葉によって意図を伝え合うこと)やネットワークをもたらします。これらは幸福に不可欠なものです。笑いヨガの目的は、いかなる判断もせず、心と心で、人々をつなげることです。これはヨガの真の意味でもあります。

笑いヨガは精神の成長を促進する:笑いヨガは単なる笑いを超えています。肉体的な幸福感情を育てるだけではなく、精神性(霊性)をも高め、感情の核心に触れます。利己的な心を、利他的な心に変える力があります。笑わない人に比べると、日常的に笑っている人のほうが寛大で、感情移入もしやすくなり得ることが証明されています。

笑いのもつ、こうした内面の精神は、人々が内的に平和な状態を育てていくにしたがって、表に現れてきています。生活を駆り立てている心配や真剣な目標は、あまり重要ではなくなってきています。人々は、本当の幸せは無条件の愛や他人を思いやる心、お互いに等しく分かち合う心から生まれる、ということに気づき始めています。笑いヨガは、自分たちのためだけではなく誰ものために世界をよりよい場所にするよう、参加者を励ますものなのです。